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いろいろな種類に驚き。「干し芋」5種類食べくらべ。

2019年3月1日|てらしまちはる

茨城へ遊びに行って、はじめて見る「干し芋」をたくさん見つけました。地味だけど、奥深い味わいのこの食べ物。興味津々で、5種類集めて食べくらべてみました。

一日かけて、水戸や大洗を車でめぐったある日のこと。立ち寄るあちこちで、干し芋が売られているのをよく見かけました。


なんでこんなに? と思って検索してみたら、茨城は干し芋の全国生産量日本一なんですって。
さつま芋の生産量では、鹿児島についで第2位。

“さつまいも”


どうりで、ひんぱんに見かけるわけですね。しかも、見たことのないたくさんの種類があるのに驚きました。


“5種類のパッケージと、それぞれの中身1” “5種類のパッケージと、それぞれの中身2” 5種類のパッケージと、それぞれの中身

これはぜひとも食べてみなければ。 とくに気になった5種類を集めて、食べくらべしてみることにしました。



天下副将軍 干いも(大丸物産)


“天下副将軍 “天下副将軍 天下副将軍 干しいも


まずは、おなじみのぺたっとした形のものから。この形は「平干し」といわれ、文字通り、平らな形にして干す工程を経ています。


さて、味はというと・・・。うん、THE・干し芋ですね(笑)。干し芋といって思い浮かべる、ねっとりした食感と濃い甘み、かたいようなやわらかいような独特の食感、遠くに感じるうっすらとした苦味が、すべてそろっています。


日常のなかの普遍的なおいしさ。以降の品は変わり種ばかりなので、最初にこれを食べたことがブレない味の基準になりました。


パッケージの裏には、干し芋の歴史が紹介されていました。
「蒸す→スライス→天日乾燥」というシンプルな製造法が生まれたのは、明治時代のことだとか。さつま芋の生育に適した土壌と、冬に雨が少なく海風の吹く干し芋作りにぴったりの気候があいまって、さかんに作られるようになったそうです。どの干し芋も、ひとつずつ手作りなんですって。



茨城県産 紅はるか 丸干しいも(照沼勝一商店)


“茨城県産 “茨城県産 茨城県産 紅はるか 丸干しいも


こちらは、今回私がはじめて知った形。「丸干し」というそうです。この形は、茨城ならではのもののようですよ。紅はるかは、使っている芋の品種名です。

ころころと太った黄金色のお芋に、思わず手が伸びます。・・・これはおいしい。 口いっぱいに、甘みがおしよせます。先ほどの「天下副将軍 干いも」で感じたうっすらとした苦味は、ここにはほとんどありません。

まるごと一本で作っているからか、太めのものだと表面部分と中心部分で微妙な乾き加減のちがいが感じられて、味のメリハリもありました。ひとつ食べれば、大きな満足感が得られる一品です。



紫芋(大丸屋)


“紫芋1” “紫芋2” 紫芋


めずらしい紫芋の干し芋。これも丸干しです。丸干しは平干しとくらべて、乾燥に2〜3倍の時間がかかるそうです。その分、甘さとやわらかさ、そして芋の風味が強い傾向にあるんだとか。

じゃあ、紫芋を丸干しにしているこれは、どんな味なんでしょう。ひとくちかじると、あれ? さっぱり、食べやすい。むちむちしてはいるけれど、ねっとりかみきれないというほどじゃありません。


ちょっと変なコメントかもしれませんが、軽めで、今っぽい風味だなあと思いました。干し芋好きな人が「干し芋が食べたい」と思ってこれを手にしたとしたら、期待した甘さやねっとり感が少ないから、物足りなく感じる気がします。けれど、普段のおかしとしては、飽きのこない満点に近い味では。甘さひかえめの和菓子を食べているような感覚でした。

そもそも、生の紫芋を買ってふかしたときも、色のイメージとはうらはらに、案外あっさりしていますもんね。
「そうか〜、あれを干したらこうなるのか〜」と考えながらもぐもぐするのも、けっこう楽しかったです。



茨城県産 いずみ(幸田商店)


“茨城県産 “茨城県産 茨城県産 いずみ


全体にまっしろな粉が見られます。これは糖分の結晶で、おいしい干し芋の証拠です。

さて、こちらはどんな味かなと、ほおばってみて驚きました。これはちょっと、いままでのものとは別格・・・。ひとくちで止まらないんです。ふたくち、みくち、自然にすすんでしまうくらいおいしい。


甘さもあるけれど、さつま芋の風味もちゃんと並走。そして、白い粉のコーティングが、全体をひとつにまとめています。これ一枚で、完成された和菓子に匹敵すると私は思います。


商品名にもなっている「いずみ(泉)」は、やはり芋の品種名。希少品種だそうで、県外ではあまり流通していないと聞きました。今回偶然出会えたのは、わりにラッキーだったかも。リピートの予感です。



ベルベット(大丸屋)


“ベルベット1” “ベルベット2” ベルベット

最後は、ひときわめずらしい品です。「ベルベット」という品種名の、赤茶色をしたさつま芋を加工しています。


最もさつま芋の風味を強く感じたのが、意外にもこれでした。甘みはそれほど強くなく、ねっとり感は中程度。野性味ある味を楽しみたいときには、いいと思います。もし料理に使うなら、5種類のなかではこれがいちばんしっくりくるんじゃないかなあ。





素材をそのまま活かした、干し芋。5つの干し芋を食べくらべてみて、はずれはひとつもありませんでした。けれど、いままでなんとなく「どれも同じ」と思っていたのが、大間違いだいうのもよくわかりました。品種や加工の仕方で、こんなにバラエティーに富むものなんですね。

個人的にいちばん好きだったのは「茨城県産 いずみ」、2位は「茨城県産 紅はるか 丸干しいも」でした。


干し芋はそのまま食べるほかにも、バターを落として軽くあぶったり、天ぷらにしたりと、調理の幅もあります。冬ならではの味覚を、たっぷり楽しんでみてはいかがですか。





この記事を書いた人

てらしまちはる Chiharu Terashima |ライター

児童書編集を経て、フリーライター。専門分野である絵本、こどもアプリの話題を中心に、ウェブ媒体や雑誌で執筆中。2016年より始めたイタリア・ボローニャブックフェア独自取材を今年『ボローニャてくてく通信』として発表する。

ボローニャてくてく通信
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(2018/3/1公開)
・公式HP:http://terashimachiharu.com/

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