したことある? 浜辺のたからさがし 〜千葉・館山の無人島でビーチコーミング〜
2019年6月11日|てらしまちはる
私には十年来の楽しみがあります。浜辺を歩いて、流れ着いたものを眺める「ビーチコーミング」です。
ある晴れた土曜日、私は千葉・館山の「沖の島」にいました。
ここは房総半島から陸続きの無人島。まる一日、ぽっかり空いた時間をのんびり過ごそうと、地図を眺めてここに来ることに決めたのは、昨日のことでした。
沖の島はぐるりが約1キロ。ちょっと歩けばすぐに一周できてしまう、小さな島です。そんなところで、いったい何をするかって?
ふっふっふ、あなたはまだこの楽しみを知らないと見た……
ビーチコーミングをしに来たんですよ。
ビーチコーミングって何?という疑問をひとまず置いて、ちょっと一緒に歩き始めましょう。波や風、浜辺の感じからして、向かって左手の方が魅力にあふれている予感。沖の島探検の、はじまりはじまりです。
陸からつづいた道より、沖の島を眺める。左の砂浜から初めて、時計回りに回ろうと思う。
左側に見えていた砂浜は、やっぱり読みどおり、いろんなものが流れ着いていました。ビーチコーミングとは、浜辺に見られるいろいろな漂着物を眺めたりひろったりする遊びのことです。
私は十年前に人に教えてもらってから、すっかりハマったくち。
ガラスの欠片(ビーチグラス)など、人によって興味の対象はさまざまですが、私はがぜん生き物が好きです。
でも、自然が相手の遊びなので、海岸にそもそも何も流れ着いていないということもあるんです。
何度も「ここには流れてきてる」「ここにはないぞ」を繰り返すうち、漂流物のありそうな自然条件が感覚的にわかるようになりました。
こちらの砂浜はでだしからヒット。貝の破片などがたくさん見られる。面白いものが見つかるといいなあ。
かすかな波の寄せる水際を、じっと見つめながら歩きます。すると早速、うれしい収穫が。ウニのなかま「カシパン」をひろいました。
本命だったカシパンをゲット。これはたぶんヨツアナカシパン。
このカシパンという生き物、ひと昔前に芸能人の中川翔子さんが好きだというので話題になったことも(知ってる?)。
フリーハンドで描いたような不思議な円形が、なんともかわいいんですよね……
ついてきてますか、みなさん? 誰がなんと言おうと、私にはシブカワですわ。
こうして拾えるものは、だいたいがすでに死んでしまった「殻」の状態ですが、江ノ島水族館などでは生きた個体の展示もしています。生きているカシパンは、表面に動く無数の細かいトゲがあって、ああ、ウニの仲間なんだなあと感慨深くなりますよ。
こっちは大物、たぶんタコノマクラというウニの破片です。割れてないものだと、大人の両手に収まるかどうかというほどの重量感があって、見つけたときの多幸感ったらありません。今回は残念ながら、全体像がわかるタコノマクラは見つかりませんでした。
そうこうするうちに、砂浜はいつしか磯へと変化しています。ゴツゴツとした岩場、足元に気をつけて散歩をつづけましょう。
お、ちょっとここを見てください。岩にポツポツと小さな穴があいています。これ、なんだかわかりますか?
答えは、貝のあけた穴です。海岸を歩いていると、こんな「貝のマンション」をよく見かけます。見ようによってはかわいいよなあと私は思うんですが、これは人によるのかもしれませんね。
磯の岩はだんだんと大きくなり、行く手に崖が見えてきました。ちょうど島の半分くらい来たころなので、このあたりが折り返し地点だと思います。
崖の上まで、大きな岩をつたって何とか登れるようになっていました。でも、ちょっと気を抜くと怪我をしかねません。慎重に上を目指します。崖の上には、何やら人が出入りする大きな穴があいています。
なんだろう? 面白そうなので中をのぞいてみると−−。
海側まで貫通した、かなり大きな洞窟です。あちらからの光が差して、幻想的ですね。
壁を見て、人が掘ったような跡があるのに気づきました。自然の造形にしてはちょうど人間サイズの出入り口があるなと思っていたのですが、あれ? この掘り方、どこかで見たことある……。
その時、私は埼玉県の横穴古墳「吉見百穴」を思い出していました。吉見百穴そのものは古墳時代に埋葬に使われた岩山なのですが、頑丈な岩盤ということで、第二次世界大戦中に軍事施設として使われたことがあったのです。人の手で掘られた軍事トンネルの壁がちょうどこんな風合いでした。
家に戻ってから調べてみると、やはりここも戦争遺跡だとわかりました。戦時中の見張り台だったそうです。
洞窟を超えると、すうっと下り坂に。その先には、洗濯板のような特徴的な岩場が広がっています。ダイナミックな光景。
さらにその先に行くと、今度は貝殻ばかりが堆積した浜に出ました。数十メートル進んだだけで、見えるものがどんどん変わっていきます。
あ、ヤドカリ。浅い水底に、たくさんのヤドカリがちょこちょこ歩いていました。
島一周のゴールが、そろそろ近づいてきました。出発したのとは反対側の浜辺では、探検の最後におもしろい漂流物がありました。ウツボが流されてきていたんです。少々グロテスクなので写真は載せずにおきますが、顎の骨の作りには興味深いものがありました。
はたして、一周完了。さっと歩いてしまえば三十分もかからない島ですが、ゆっくり探検して、観察して、寄り道を堪能していたら、あっという間に二時間経っていました。
今回の戦利品は、こんな感じ。
何もない小さな無人島で過ごす、波の音と潮風だけのぜいたくな時間。自然は本みたいに、いくらでも読むことができるから、飽きる心配もありません。
海が近いこれからの季節、あなたもビーチコーミングはいかがですか?
ここは房総半島から陸続きの無人島。まる一日、ぽっかり空いた時間をのんびり過ごそうと、地図を眺めてここに来ることに決めたのは、昨日のことでした。
沖の島はぐるりが約1キロ。ちょっと歩けばすぐに一周できてしまう、小さな島です。そんなところで、いったい何をするかって?
ふっふっふ、あなたはまだこの楽しみを知らないと見た……
ビーチコーミングをしに来たんですよ。
ビーチコーミングって何?という疑問をひとまず置いて、ちょっと一緒に歩き始めましょう。波や風、浜辺の感じからして、向かって左手の方が魅力にあふれている予感。沖の島探検の、はじまりはじまりです。
陸からつづいた道より、沖の島を眺める。左の砂浜から初めて、時計回りに回ろうと思う。
左側に見えていた砂浜は、やっぱり読みどおり、いろんなものが流れ着いていました。ビーチコーミングとは、浜辺に見られるいろいろな漂着物を眺めたりひろったりする遊びのことです。
私は十年前に人に教えてもらってから、すっかりハマったくち。
ガラスの欠片(ビーチグラス)など、人によって興味の対象はさまざまですが、私はがぜん生き物が好きです。
でも、自然が相手の遊びなので、海岸にそもそも何も流れ着いていないということもあるんです。
何度も「ここには流れてきてる」「ここにはないぞ」を繰り返すうち、漂流物のありそうな自然条件が感覚的にわかるようになりました。
こちらの砂浜はでだしからヒット。貝の破片などがたくさん見られる。面白いものが見つかるといいなあ。
かすかな波の寄せる水際を、じっと見つめながら歩きます。すると早速、うれしい収穫が。ウニのなかま「カシパン」をひろいました。
本命だったカシパンをゲット。これはたぶんヨツアナカシパン。
このカシパンという生き物、ひと昔前に芸能人の中川翔子さんが好きだというので話題になったことも(知ってる?)。
フリーハンドで描いたような不思議な円形が、なんともかわいいんですよね……
ついてきてますか、みなさん? 誰がなんと言おうと、私にはシブカワですわ。
こうして拾えるものは、だいたいがすでに死んでしまった「殻」の状態ですが、江ノ島水族館などでは生きた個体の展示もしています。生きているカシパンは、表面に動く無数の細かいトゲがあって、ああ、ウニの仲間なんだなあと感慨深くなりますよ。
こっちは大物、たぶんタコノマクラというウニの破片です。割れてないものだと、大人の両手に収まるかどうかというほどの重量感があって、見つけたときの多幸感ったらありません。今回は残念ながら、全体像がわかるタコノマクラは見つかりませんでした。
そうこうするうちに、砂浜はいつしか磯へと変化しています。ゴツゴツとした岩場、足元に気をつけて散歩をつづけましょう。
お、ちょっとここを見てください。岩にポツポツと小さな穴があいています。これ、なんだかわかりますか?
答えは、貝のあけた穴です。海岸を歩いていると、こんな「貝のマンション」をよく見かけます。見ようによってはかわいいよなあと私は思うんですが、これは人によるのかもしれませんね。
磯の岩はだんだんと大きくなり、行く手に崖が見えてきました。ちょうど島の半分くらい来たころなので、このあたりが折り返し地点だと思います。
崖の上まで、大きな岩をつたって何とか登れるようになっていました。でも、ちょっと気を抜くと怪我をしかねません。慎重に上を目指します。崖の上には、何やら人が出入りする大きな穴があいています。
なんだろう? 面白そうなので中をのぞいてみると−−。
海側まで貫通した、かなり大きな洞窟です。あちらからの光が差して、幻想的ですね。
壁を見て、人が掘ったような跡があるのに気づきました。自然の造形にしてはちょうど人間サイズの出入り口があるなと思っていたのですが、あれ? この掘り方、どこかで見たことある……。
その時、私は埼玉県の横穴古墳「吉見百穴」を思い出していました。吉見百穴そのものは古墳時代に埋葬に使われた岩山なのですが、頑丈な岩盤ということで、第二次世界大戦中に軍事施設として使われたことがあったのです。人の手で掘られた軍事トンネルの壁がちょうどこんな風合いでした。
家に戻ってから調べてみると、やはりここも戦争遺跡だとわかりました。戦時中の見張り台だったそうです。
洞窟を超えると、すうっと下り坂に。その先には、洗濯板のような特徴的な岩場が広がっています。ダイナミックな光景。
さらにその先に行くと、今度は貝殻ばかりが堆積した浜に出ました。数十メートル進んだだけで、見えるものがどんどん変わっていきます。
あ、ヤドカリ。浅い水底に、たくさんのヤドカリがちょこちょこ歩いていました。
島一周のゴールが、そろそろ近づいてきました。出発したのとは反対側の浜辺では、探検の最後におもしろい漂流物がありました。ウツボが流されてきていたんです。少々グロテスクなので写真は載せずにおきますが、顎の骨の作りには興味深いものがありました。
はたして、一周完了。さっと歩いてしまえば三十分もかからない島ですが、ゆっくり探検して、観察して、寄り道を堪能していたら、あっという間に二時間経っていました。
今回の戦利品は、こんな感じ。
何もない小さな無人島で過ごす、波の音と潮風だけのぜいたくな時間。自然は本みたいに、いくらでも読むことができるから、飽きる心配もありません。
海が近いこれからの季節、あなたもビーチコーミングはいかがですか?
この記事を書いた人
てらしまちはる Chiharu Terashima |ライター
児童書編集を経て、フリーライター。専門分野である絵本、こどもアプリの話題を中心に、ウェブ媒体や雑誌で執筆中。2016年より始めたイタリア・ボローニャブックフェア独自取材を今年『ボローニャてくてく通信』として発表する。
ボローニャてくてく通信
・Facebook:https://www.facebook.com/bolognatektek/
(2018/3/1公開)
・公式HP:http://terashimachiharu.com/
関連するタグ
この記事もおすすめ
-
和装によく合う風呂敷は、包み方やデザイン次第で洋服にもマッチするアイテムです。そして実はとても便利なグッズでもあるのです!
2021年12月28日|シブカワ百貨事典