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職人こだわりのうちわで、日本の風情ある涼を楽しむ

2018年7月9日|渡邊晃子

ムシムシする梅雨が終われば、次にやってくるのは暑い夏。そんな季節に、昔ながらの技巧で作られた特別なうちわで、涼を感じてみませんか。

日本の夏の必需品といえば、手であおいで涼しい風を起こすうちわ。
日本の夏の必需品といえば、手であおいで涼しい風を起こすうちわ。室町時代末期には、現在のような竹骨と紙を素材とした形に定着したと言われています。涼を感じるためだけでなく、火を起こしたり、料理を冷ましたり、さまざまな場面で活躍する生活の道具です。うちわに描かれた絵を目で見て楽しむという使い方もされてきました。


歴史あるうちわは、職人たちの手によって、日本各地で今も作られ続けています。
歴史あるうちわは、職人たちの手によって、日本各地で今も作られ続けています。千葉県の「房州うちわ」、京都府の「京うちわ」、香川県の「丸亀うちわ」などが有名ですね。丸い形や角ばった形、使う和紙の種類、骨の組み方、柄の素材など、その趣向もさまざま。今回の記事では、特に気になった3つのシブカワうちわをご紹介します。


透明感あふれる「水うちわ」で見た目にも涼しく


岐阜県で「岐阜うちわ」を作り続けている住井冨次郎商店の「水うちわ」です。
はじめにご紹介するのは、岐阜県で「岐阜うちわ」を作り続けている住井冨次郎商店の「水うちわ」です。「岐阜うちわ」は、竹骨に貼った和紙に、塗りを施して仕上げるのが特徴のひとつ。その中の「水うちわ」は、雁皮紙(がんぴし)という極めて薄い美濃和紙に天然のニスを塗った、透明感あふれるうちわです。


水のように透ける「水うちわ」は、見た目がとても涼しげ。
水のように透ける「水うちわ」は、見た目がとても涼しげ。こちらの金魚柄は、艶やかなうちわの面の上で、本当に金魚が泳いでいるような美しさです。フィルムと見紛うほど、和紙でできているとは思えない透明感に誰もが驚くはず。清涼感たっぷりなので、夏のインテリアとして飾ってみても良いですね。


水のように透ける「水うちわ」は、見た目がとても涼しげ。
昔は、岐阜名物の鵜飼いを鑑賞する船上で、川の水を付けてあおいで涼をとっていたという説もあるそうですが、すべて天然素材でできているため、おすすめはしないとのこと。水をつけなくても、ただ手にとってあおぐだけで、その見た目が相まって、十分に涼しさを感じることができますよ。


ノスタルジックな木陰の情景が浮かぶ「こもれびうちわ」


アートディレクターの平田ことこさんがプロデュースした真っ白でシンプルな「こもれびうちわ
お次は、アートディレクターの平田ことこさんがプロデュースした真っ白でシンプルな「こもれびうちわ」。一番の特徴は、光にかざすと、うちわの面の上に木の葉のシルエットが浮かび上がること。その名前の通り、障子に映ったこもれびのような景色を作りだすうちわです。


木の葉模様が入ったオリジナルの透かし和紙は、職人さんの手によって一枚づつ丁寧に手漉きされたもの。
「こもれびうちわ」には、福井県の山次製紙所で作られた越前和紙が使われています。木の葉模様が入ったオリジナルの透かし和紙は、職人さんの手によって一枚づつ丁寧に手漉きされたもの。ぼんやりとした輪郭のこもれびを表現するため、3つの層を重ねて透かし模様を作っています。


手にとるだけで、夏の木陰の涼しさを感じることができる「こもれびうちわ」。あおぐたびに現れるこもれびは、ノスタルジックな気分にもさせてくれます。
また、仕立ては、「京うちわ」の老舗で創業300年の阿以波によるもの。職人さんの手仕事を積み重ねて完成したうちわは、あおぎ心地もしなやかです。手にとるだけで、夏の木陰の涼しさを感じることができる「こもれびうちわ」。あおぐたびに現れるこもれびは、ノスタルジックな気分にもさせてくれます。


長い年月と共に色合いが深みを増す「来民渋うちわ」


熊本県の栗川商店が昔ながらの製法で作っている「来民(くたみ)渋うちわ」です。
最後は、熊本県の栗川商店が昔ながらの製法で作っている「来民(くたみ)渋うちわ」です。その歴史は、江戸時代に丸亀の旅僧が一泊のお礼に、うちわの製法を伝授したのが始まりとされています。かつては、「京うちわ」、「丸亀うちわ」と共に、うちわの日本三大産地のひとつでした。


「来民渋うちわ」は、青い未熟の豆柿から採った柿渋を塗って仕上げてあります。
「来民渋うちわ」は、青い未熟の豆柿から採った柿渋を塗って仕上げてあります。柿渋は和紙を丈夫にして長持ちさせることができ、タンニンの働きで防虫効果もあるようです。新しいものは薄茶色をしていますが、年月と共に色合いが深みを増し、やがて茶褐色に変化していきます。


こういった特色から、「育てるうちわ」とも称され、赤ちゃん誕生や結婚、還暦などのお祝いに贈る人も多いそう。
こういった特色から、「育てるうちわ」とも称され、赤ちゃん誕生や結婚、還暦などのお祝いに贈る人も多いそう。ちなみに、うちわの面に描かれている絵柄は、縁起の良い宝づくし。主張の少ない「来民渋うちわ」ですが、確かな存在感がある奥ゆかしいうちわです。


ずっと大事に使い続けたい日本の手づくりうちわ


さらに、夏場になると、広告媒体としての販促うちわがいたるところで配布されるので、うちわを買う人も少なくなっているかもしれません。筆者の家でも、10年ほどお気に入りの販促うちわが活躍していました。
近年は、扇風機やクーラーの普及で、日常的にうちわを使うことも少なくなっています。さらに、夏場になると、広告媒体としての販促うちわがいたるところで配布されるので、うちわを買う人も少なくなっているかもしれません。筆者の家でも、10年ほどお気に入りの販促うちわが活躍していました。


素敵なうちわに出会えた今年の夏は、いつもよりも涼しく過ごせる気がしています。
しかし、夏祭りや花火大会での浴衣姿に合うはずもなく、良いうちわをずっと探していました。昔ながらのうちわを帯に差しておでかけすれば、見た目も上品で軽やかな印象を与えてくれそう。素敵なうちわに出会えた今年の夏は、いつもよりも涼しく過ごせる気がしています。


この記事を書いた人

渡邊晃子 Akiko Watanabe |ライター

フリーのライター、インタビュアー、フォトグラファーとして活動。 主に芸能記事を手掛ける。現在は、自然豊かな熊本で子育て中。 国内外の古くて変わったモノが好き。

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