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切手の中の小さな小さな世界!昔の切手あれこれ(前編)

2018年5月2日|渡邊晃子

ストックブックに眠っていた昔の切手の数々。前編は、日本の文化を小さな切手に納めた、さまざまなシリーズをご紹介します。

日本では、1950年代後半から1970年代ごろに、趣味のひとつとして「切手収集」ブームが巻き起こりました
仕事やプライベートで誰もが使っている切手。日本では、1950年代後半から1970年代ごろに、趣味のひとつとして「切手収集」ブームが巻き起こりました。当時は、新しい切手が発売されると、郵便局に長蛇の列が並んだそうです。1枚あたりの価格もお手頃なので、子どもたちも夢中になって収集していました。


筆者の実家の本棚にも、父と伯父が収集した切手のストックブックがズラリと並んでいます。
さて、筆者の実家の本棚にも、父と伯父が収集した切手のストックブックがズラリと並んでいます。絵柄が豊富で飽きないので、子どもの頃に1ページ1ページじっくりと、ただ眺めていたものです。今回は、そんな思い出のストックブックを久しぶりに引っ張り出してきました。


戦前の切手から、東京オリンピックや大阪万博の記念切手など近代日本の歴史をたどるものから、国宝シリーズ、SLシリーズ、魚介シリーズといったシリーズものまで、その内容はバラエティ豊か。
開いてみれば、戦前の切手から、東京オリンピックや大阪万博の記念切手など近代日本の歴史をたどるものから、国宝シリーズ、SLシリーズ、魚介シリーズといったシリーズものまで、その内容はバラエティ豊か。


毎年発売されている「国際文通週間」、「相撲絵シリーズ」、「昔ばなしシリーズ」の3種類。たくさんある古い切手の中で、“シブカワで楽しい”と思うものをピックアップしました。
そこで、今回は前半と後半に分けて、ストックブックにあった切手をいくつかご紹介します。前半は、毎年発売されている「国際文通週間」、「相撲絵シリーズ」、「昔ばなしシリーズ」の3種類。たくさんある古い切手の中で、“シブカワで楽しい”と思うものをピックアップしました。


世界に日本の文化を発信する「国際文通週間」


1958年から毎年発行されている特殊切手「国際文通週間」。初年から1969年までの12年間は、浮世絵をテーマに、歌川広重の「東海道五十三次」と葛飾北斎の「富嶽三十六景」が発行されました。
1958年から毎年発行されている特殊切手「国際文通週間」。初年から1969年までの12年間は、浮世絵をテーマに、歌川広重の「東海道五十三次」と葛飾北斎の「富嶽三十六景」が発行されました。ちなみに昨年度も、広重の作品が採用されています。


誰もが知っている浮世絵作品が、美しい色調をそのままに、小さな切手の中におさまっています。
写真は、「東海道五十三次」の「京師」(1958年)、「箱根」(1961年)、「富嶽三十六景」の「神奈川沖浪裏」(1963年)、「保土ヶ谷」(1964年)、「三坂水面」(1965年)、「隅田川関谷の里」(1966年)、「甲州石班沢」(1967年)、「甲州三島越」(1969年)。誰もが知っている浮世絵作品が、美しい色調をそのままに、小さな切手の中におさまっています。


1970年から1972年の3年間は、三代目広重による「駅逓寮図」(1970年)、「永代橋の真景」(1972年)といった文明開化を描く明治の錦絵が登場します。
続く、1970年から1972年の3年間は、三代目広重による「駅逓寮図」(1970年)、「永代橋の真景」(1972年)といった文明開化を描く明治の錦絵が登場します。繊細で情緒あふれる錦絵は、見ていて飽きません。


そもそも、「国際文通週間」の記念切手は、国際間の文通用として発行されているもの。世界に日本の文化を発信するシリーズとして、日本の名作絵画や伝統工芸品、絵巻物、屏風絵などをテーマに発行を続けています。
そもそも、「国際文通週間」の記念切手は、国際間の文通用として発行されているもの。世界に日本の文化を発信するシリーズとして、日本の名作絵画や伝統工芸品、絵巻物、屏風絵などをテーマに発行を続けています。


浮世絵師たちが描いた迫力の「相撲絵シリーズ」


1978年から1979年にかけて、全5集が発行された特殊切手「相撲絵シリーズ」。2枚が一組になった連刷切手と別の1枚がセットになっています。
1978年から1979年にかけて、全5集が発行された特殊切手「相撲絵シリーズ」。2枚が一組になった連刷切手と別の1枚がセットになっています。こちらも、歌川広重をはじめ、歌川国貞、歌川国芳、喜多川歌麿、東洲斎写楽といった著名な浮世絵師たちの作品です。


「秀ノ山雷五郎横綱土俵入りの図」や「陣幕と雷電取り組みの図」、「武隈と岩見潟取組の図」などは、迫力ある力士たちの息づかいまで聞こえてきそう。
「秀ノ山雷五郎横綱土俵入りの図」や「陣幕と雷電取り組みの図」、「武隈と岩見潟取組の図」などは、迫力ある力士たちの息づかいまで聞こえてきそう。最近、すったもんだの相撲業界ですが、歴史ある日本の文化だと感じさせてくれる切手です。


両国橋を渡って場所入りする力士たちを描いた「大角力両国橋渡の図」をよく見ると、帯刀していることに驚き。江戸時代、横綱などの強豪力士は帯刀することが許されていたそうです。
また、両国橋を渡って場所入りする力士たちを描いた「大角力両国橋渡の図」をよく見ると、帯刀していることに驚き。江戸時代、横綱などの強豪力士は帯刀することが許されていたそうです。また、「大童山土俵入りの図」は、数え年7歳で土俵入りを果たしたちびっこ力士・大童山文五郎を描いたもの。立派な身体ながら、あどけない表情がかわいらしい。


一話づつ異なる雰囲気の「昔ばなしシリーズ」


1973年から1975年にかけて発行された特殊切手「昔ばなしシリーズ」。全国で広く親しまれている「花さかじじい」、「つる女房」、「一寸法師」、「かぐや姫」、「こぶとりじいさん」、「浦島太郎」、「ねずみの浄土」の7話が発行されました。
1973年から1975年にかけて発行された特殊切手「昔ばなしシリーズ」。全国で広く親しまれている「花さかじじい」、「つる女房」、「一寸法師」、「かぐや姫」、「こぶとりじいさん」、「浦島太郎」、「ねずみの浄土」の7話が発行されました。


1話3種類づつある切手は、それぞれ異なる作家がデザインしています。童画画家の黒崎義介が手掛けた「ねずみの浄土」は、「出会い」、「浄土」、「もてなし」とストーリーが展開されます。並べてみると、まるで絵本を読んでいるようなやさしいタッチが良いですね。
1話3種類づつある切手は、それぞれ異なる作家がデザインしています。童画画家の黒崎義介が手掛けた「ねずみの浄土」は、「出会い」、「浄土」、「もてなし」とストーリーが展開されます。並べてみると、まるで絵本を読んでいるようなやさしいタッチが良いですね。


「一寸法師」を手掛けたのは、絵本「モチモチの木」の挿絵で知られる切り絵画家の滝平二郎。「おわんの舟」、「鬼退治」、「打ち出の小槌」というストーリーが、力強い切り絵で表現されています。臨場感あふれる「鬼退治」のシーンが、筆者のお気に入り。
「一寸法師」を手掛けたのは、絵本「モチモチの木」の挿絵で知られる切り絵画家の滝平二郎。「おわんの舟」、「鬼退治」、「打ち出の小槌」というストーリーが、力強い切り絵で表現されています。臨場感あふれる「鬼退治」のシーンが、筆者のお気に入り。


インターネットという通信手段が盛んになり、切手を使うことが少なくなってきている現代。筆者も最近では、月に一回ほどしか切手を使う機会がありません。この記事を書きながら、たまには誰かに手紙を書いてみようかと思いを巡らせました。
インターネットという通信手段が盛んになり、切手を使うことが少なくなってきている現代。筆者も最近では、月に一回ほどしか切手を使う機会がありません。この記事を書きながら、たまには誰かに手紙を書いてみようかと思いを巡らせました。


同記事は、戦前の切手や珍しい切手を紹介する後編記事に続きます。



この記事を書いた人

渡邊晃子 Akiko Watanabe |ライター

フリーのライター、インタビュアー、フォトグラファーとして活動。 主に芸能記事を手掛ける。現在は、自然豊かな熊本で子育て中。 国内外の古くて変わったモノが好き。

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