ぶらり 道後のたび <後編>
2017年10月13日|てらしまちはる
思いたって道後温泉にやってきた前編。ぶらぶら寄り道して、今回はついにお湯に入ります。
腹ごしらえもすんだし、いよいよ温泉にいくか! と勇み足で踏み出した私。この角を曲がって、こっちかな……とやっていると、数分のうちに観光サイトで見知った光景が眼前に広がりました。道後温泉本館だ!
レトロなたたずまいの道後温泉本館
温泉ゆかりの鷺モチーフに目を奪われる
明治27年に建てられた道後温泉本館は、この温泉街のシンボル的存在。夏目漱石は明治28年に旧制松山中学の英語教師として赴任しており、彼もまた足しげく通った一人でした。その時にはまだ、新築で木の香りが漂っていたといいます。
「坊ちゃん」では、舞台を四国とだけ記しているものの、作中の方言などから松山がモデルと考えられています。「住田の温泉」として登場するのが、この道後温泉本館だとか。
入り口では、順番待ちの人を呼ぶ番台さんの声が響き渡っています。本館ではお湯に入るだけのほか、待ち合い部屋がランク別に用意されていて、入室を待つのに混み合っているのです。運良く一番上等の三階席に通してもらえることになって、にわかに興奮……!
三階席に向かう長い廊下
三階席は個室。ゆったり過ごせる
開け放した窓から通りをのぞむ
霊の湯(道後温泉本館より引用)
神の湯(道後温泉本館より引用)
道後温泉本館には一般客用の湯殿として、大浴場の「神の湯」と、比較的小ぶりの「霊(たま)の湯」の二つがあります。どちらも源泉は同じで、なめらかなアルカリ性単純泉です。
三階席の個室は90分制とのことで、さっそく浴衣に着替えます。まずは「霊の湯」。私が入った時には入浴人数も少なく、ゆったりじっくり浸かれました。深めの湯船に首までつかって、やわらかなお湯を思う存分堪能。
つづいて「神の湯」。こちらは一般的な銭湯に近く、大きな脱衣所に広い浴場が気持ちい〜い! 湯船はやはり深めで、やや熱め。「霊の湯」では全体に石造りでしたが、こちらは陶器があしらわれているのも、趣向が変わって面白かったですよ。
ちなみに、女湯では見かけなかったのですが(見落としたかな?)、男湯には「坊ちゃん泳ぐべからず」との古い注意書きもあったそうです。み、見たかったな……。
又新殿(松山市HPより引用)
湯上がりには、本館内に皇族用として作られた「又新殿(ゆうしんでん)」を見学したり、部屋で涼みながら坊ちゃん団子をいただいたりと、歴史を感じるレトロな空間でのんびり過ごしました。
三階席の最奥は漱石ゆかりの間
漱石が滞在した部屋には関連展示が
松山での教員時代の写真。年若い漱石は”イケメン”だ
本館を出てホテルに戻るまでの間、商店街をぶらぶら散策。あてのないさんぽこそ、温泉街の醍醐味です。
名物ののれん下で貫禄のうたた寝
どこにでもありそうなおみやげ屋などに混じって、竹細工や陶器をならべる店がちらほら見かけます。この辺りの特産なのかな?
竹細工の店を見がてら、お店の人に聞いてみると……。「竹細工は古くから名産なんですよ。温泉の熱で竹を曲げられるから」とのこと。なるほど、熱には別の利用法もあったのですね。
道後温泉駅前の足湯「放生園」
「じゃこ天」のバーガー。違和感なく美味
陶器は砥部焼(とべやき)といい、愛媛・砥部で焼かれたものでした。距離を調べてみると、車ならそう遠くはない場所です。行けると思うと、がぜん焼き物好きの血がたぎります。旅の最後はここに行ってみよう。
窯が点在する砥部
翌日、道後から足をのばして砥部へ。窯ごとに販売店があるので、いくつかのぞいてみました。
砥部焼のベーシックなスタイルは、白地に青の染め付けや青磁。全体に基本をおさえながらも、現代的な感覚で職人それぞれがデザインを遊ぶ空気感があり、どの窯の作品も見ていて飽きることがありません。
数ある魅力的な作品のなかで私が気になったのは、陶彩窯のツバメ柄の皿でした。すっきりした絵柄なのにぬくもりがあって、遠くからでも引き寄せられてしまうほど、気になる。
陶彩窯の器の数々
気になったツバメ柄の皿
ツバメのイラストは明治生まれのグラフィックデザイナー・杉浦非水のものでした。杉浦は松山出身で、三越の広告などを手がけた人物。そのデザインを焼き物に引用し、現代によみがえらせたシリーズが、この皿でした。
どうりで、シブカワなわけだ。旅の思い出に、家へ連れて帰ろうかな。
窯探訪中に「たらいうどん」も。ふわふわでおいしい
レトロなたたずまいの道後温泉本館
温泉ゆかりの鷺モチーフに目を奪われる
レトロなお風呂を入り比べ
明治27年に建てられた道後温泉本館は、この温泉街のシンボル的存在。夏目漱石は明治28年に旧制松山中学の英語教師として赴任しており、彼もまた足しげく通った一人でした。その時にはまだ、新築で木の香りが漂っていたといいます。
「坊ちゃん」では、舞台を四国とだけ記しているものの、作中の方言などから松山がモデルと考えられています。「住田の温泉」として登場するのが、この道後温泉本館だとか。
入り口では、順番待ちの人を呼ぶ番台さんの声が響き渡っています。本館ではお湯に入るだけのほか、待ち合い部屋がランク別に用意されていて、入室を待つのに混み合っているのです。運良く一番上等の三階席に通してもらえることになって、にわかに興奮……!
三階席に向かう長い廊下
三階席は個室。ゆったり過ごせる
開け放した窓から通りをのぞむ
霊の湯(道後温泉本館より引用)
神の湯(道後温泉本館より引用)
道後温泉本館には一般客用の湯殿として、大浴場の「神の湯」と、比較的小ぶりの「霊(たま)の湯」の二つがあります。どちらも源泉は同じで、なめらかなアルカリ性単純泉です。
三階席の個室は90分制とのことで、さっそく浴衣に着替えます。まずは「霊の湯」。私が入った時には入浴人数も少なく、ゆったりじっくり浸かれました。深めの湯船に首までつかって、やわらかなお湯を思う存分堪能。
つづいて「神の湯」。こちらは一般的な銭湯に近く、大きな脱衣所に広い浴場が気持ちい〜い! 湯船はやはり深めで、やや熱め。「霊の湯」では全体に石造りでしたが、こちらは陶器があしらわれているのも、趣向が変わって面白かったですよ。
ちなみに、女湯では見かけなかったのですが(見落としたかな?)、男湯には「坊ちゃん泳ぐべからず」との古い注意書きもあったそうです。み、見たかったな……。
又新殿(松山市HPより引用)
湯上がりには、本館内に皇族用として作られた「又新殿(ゆうしんでん)」を見学したり、部屋で涼みながら坊ちゃん団子をいただいたりと、歴史を感じるレトロな空間でのんびり過ごしました。
三階席の最奥は漱石ゆかりの間
漱石が滞在した部屋には関連展示が
松山での教員時代の写真。年若い漱石は”イケメン”だ
温泉街で砥部焼に出会う
本館を出てホテルに戻るまでの間、商店街をぶらぶら散策。あてのないさんぽこそ、温泉街の醍醐味です。
名物ののれん下で貫禄のうたた寝
どこにでもありそうなおみやげ屋などに混じって、竹細工や陶器をならべる店がちらほら見かけます。この辺りの特産なのかな?
竹細工の店を見がてら、お店の人に聞いてみると……。「竹細工は古くから名産なんですよ。温泉の熱で竹を曲げられるから」とのこと。なるほど、熱には別の利用法もあったのですね。
道後温泉駅前の足湯「放生園」
「じゃこ天」のバーガー。違和感なく美味
陶器は砥部焼(とべやき)といい、愛媛・砥部で焼かれたものでした。距離を調べてみると、車ならそう遠くはない場所です。行けると思うと、がぜん焼き物好きの血がたぎります。旅の最後はここに行ってみよう。
窯が点在する砥部
翌日、道後から足をのばして砥部へ。窯ごとに販売店があるので、いくつかのぞいてみました。
砥部焼のベーシックなスタイルは、白地に青の染め付けや青磁。全体に基本をおさえながらも、現代的な感覚で職人それぞれがデザインを遊ぶ空気感があり、どの窯の作品も見ていて飽きることがありません。
数ある魅力的な作品のなかで私が気になったのは、陶彩窯のツバメ柄の皿でした。すっきりした絵柄なのにぬくもりがあって、遠くからでも引き寄せられてしまうほど、気になる。
陶彩窯の器の数々
気になったツバメ柄の皿
ツバメのイラストは明治生まれのグラフィックデザイナー・杉浦非水のものでした。杉浦は松山出身で、三越の広告などを手がけた人物。そのデザインを焼き物に引用し、現代によみがえらせたシリーズが、この皿でした。
どうりで、シブカワなわけだ。旅の思い出に、家へ連れて帰ろうかな。
窯探訪中に「たらいうどん」も。ふわふわでおいしい
この記事を書いた人
てらしまちはる Chiharu Terashima |ライター
児童書編集を経て、フリーライター。専門分野である絵本、こどもアプリの話題を中心に、ウェブ媒体や雑誌で執筆中。2016年より始めたイタリア・ボローニャブックフェア独自取材を今年『ボローニャてくてく通信』として発表する。
ボローニャてくてく通信
・Facebook:https://www.facebook.com/bolognatektek/
(2018/3/1公開)
・公式HP:http://terashimachiharu.com/
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