「民藝」につつまれて 〜素朴で温かみのあるお菓子3選〜
2017年8月8日|渡邊晃子
お中元や帰省のあいさつなど、箱入りお菓子の出番が多くなるこの季節。今回はそんな機会に使いたい、“民藝”につつまれたお菓子をご紹介します。
贈答品や手土産といったら、包装紙につつまれた箱入りお菓子。もちろん主役は中身のお菓子ですが、美しい包装紙につつまれていると、あける時のワクワク感もひとしおです。
数あるお菓子の中には、民藝運動に関わりのあった作家や職人がデザインしたものもあります。包装紙という存在のため、なかなか注目をすることがありませんが、そのデザインがとっても素敵なんです。
■銀座あけぼの「味の民藝」(掛け紙デザイン・芹沢けい介、「けい」は金偏に圭)
まずは、東京・銀座あけぼのの「味の民藝(33個入り)」。同店のロングセラー商品で、日常の暮らしにある日用品に“用の美”を見出す民藝運動の考え方から作られたおかきです。
外箱の掛け紙をデザインしたのは、染色工芸家の芹沢けい介(せりざわけいすけ)。「型絵染」の重要無形文化財保持者として人間国宝になった人物です。その仕事は、今も人気があるカレンダーから、着物や帯、本の装丁まで多岐にわたります。
夏の掛け紙は、涼やかなブルーの地に大胆な夏の字、柳や水を泳ぐ魚が印象的。春夏秋冬でデザインが変わる掛け紙は、どれもシックな色合いと斬新なグラフィックで目をひきます。
漆塗りがほどこされた外箱の中には、全部で17種類のおかきがぎっしり。黒豆おかきや揚げ塩、松の実あられなどスタンダードなものから、チョコカシューナッツやレーズンチーズといった個性的なものまで、色んな味が楽しめます。
商品ページ
■桜井甘精堂「純栗ようかん」(包装紙デザイン・鳥居敬一)
純栗ようかん
お次は、長野・桜井甘精堂の「純栗ようかん(1本)」。約200年の歴史を持つ桜井甘精堂では、ようかんやらくがん、もなかなど、信州小布施の良質な栗を使った栗菓子を、製法を変えることなく作り続けています。
こちらの包装紙をデザインしたのは、芹沢けい介に師事した型絵染作家の鳥居敬一(とりいけいいち)。「さかぐち」や「鈴廣かまぼこ」(昭和中期)のロゴマーク、「たいめいけん」創始者のエッセイ集「洋食や」の装丁など、独特な文字を使ったデザインが特徴です。
「純栗ようかん」の包装紙は、大胆にアレンジされた大小の栗の字がとてもかわいい。現在は、オリジナルパターンを活かしたリニューアル版が使われており、素朴でありながら洗練された印象です。
付属のカギを使って開封する昔懐かしい缶の中には、薄茶色のようかんが入っています。栗そのものを味わっているように感じるのは、栗、砂糖、寒天のみというシンプルな素材だからこそ。やさしい甘さにしみじみします。
商品ページ
■林盛堂本店「おわら玉天」(個包装紙デザイン・棟方志功)
おわら玉天
最後は、富山・林盛堂本店の「おわら玉天(10個入り)」。民謡「おわら節」が生まれた越中八尾で作られている富山三大銘菓の1つです。同地では、毎年9月に「おわら節」を歌い踊る「おわら風の盆」が行われています。
おわら玉天
こちら、外箱を包む包装紙ではないのですが、「おわら玉天」をつつんでいる薄葉紙をデザインしたのが、世界的な板画家の棟方志功(むなかたしこう)。大胆に彫られた力強い線が特徴で、仏を題材にした作品を多く残しています。
「おわら風の盆」が描かれた外箱をあけると、薄葉紙に淡いグリーンで刷られたロゴマークが目に入ります。「こんなところに、世界的巨匠の手仕事が…」とうれしい。また、同店ののれんや看板、パッケージは、「桂樹舎」創始者で紙すき職人の吉田桂介が手掛けたそうです。
おわら玉天
薄葉紙をそっとあけてみると、中から卵焼きのような黄色いお菓子が出てきます。食べてみると中はまっしろで、ふわふわと軽い食感。昔ながらの素材と製法で堅実に作られたお菓子は、どこか懐かしさを感じさせてくれます。
商品ページ
名だたる作家や職人による“民藝”につつまれたお菓子は、外身も中身も温かさと素朴さを感じるものばかり。「あけるのが楽しい」とそんな気持ちにさせてくれるお菓子は、贈答品や手土産にぜひ使いたいものです。
この記事を書いた人
渡邊晃子 Akiko Watanabe |ライター
フリーのライター、インタビュアー、フォトグラファーとして活動。 主に芸能記事を手掛ける。現在は、自然豊かな熊本で子育て中。 国内外の古くて変わったモノが好き。
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