路面電車にゆられて ゆきの札幌さんぽ
2017年2月15日|てらしまちはる
出張で、はじめての札幌にきました。たまたま時間ができたので、雪の街を路面電車でぶらぶらさんぽ。
路面電車のりばをめざして
なにしろはじめての土地なので、出発はわかりやすい場所から。JR札幌駅がこのさんぽの出発地点です。さあて、どこにいこうかな?
スマホで検索すると、札幌にはどうやら路面電車が走っているらしい。雪のなかを路面電車に揺られるなんて、すてきです。あてもないまま、とりあえず最寄りの停留所「西4丁目」まで歩きます。
足首までうまって歩く。取材は12月だった
JR札幌駅から、南方向へ1キロほど。季節は12月上旬で、ちらちらと小雪が舞っています。前日までの雪が昼間の温度でとけて凍り、どこもかしこもツルツル。街全体がさながらスケートリンクのようです。
札幌には長い地下道があり、雪の季節にはそれを歩いた方が移動しやすいのですが、なにせ雪の季節に雪国にいること自体が初体験。ここはもう、外を歩くしかない!
ゆきの道中にはあの建物が
えっちらおっちら、転びそうになりながらも足を動かしていると、途中、右手にレトロな煉瓦作りの建物がみえました。北海道庁旧本庁舎です。竣工は明治21年。煉瓦や硬石、木材などの建材に、北海道産のものを用いて建てられたのだそうですよ。
どっしり構える北海道庁旧本庁舎
つづいて、左手にテレビ塔が顔を出します。テレビ塔といえば札幌のシンボル。さっぽろ雪まつりの会場としても有名です。は、はじめてみた〜! 思ってたより、大きいなあ。
わぁ、テレビ塔だ!
大通り公園を横切った先に、ようやく「西4丁目」停留所がみえました。2両編成の路面電車が、ひっきりなしに停まっては出発していきます。
停留所でしばし足をとめ、再度検索。「中島公園通」という場所に、どうやらレトロな洋館があるらしいと知りました。よし、今回の目的地はこの「豊平館」というやつにしよう。
ひっきりなしに路面電車がとまる
遠くに見えた! あれに乗ります
路面電車は、東京の山手線のように環状になっています。ぐるっと1周しても1時間弱。時間もあるので、わざと遠回りの電車にのりこみました。
ゆられて進み、途中下車も
車の波のあいだを、自転車ほどのスピードでゴウンゴウンと走っていきます。15分ほどは、大きなビルの谷間でしたが、しだいに民家が目立つように。街のあちこちに、雪つりを施した木が立っています。
ゆられる。ここは、まだビルが多い
雪化粧した藻岩山(もいわやま)を眺めつつ、ここちよい振動にうとうと……。すると、窓の外にひときわ盛大な雪つりの光景を発見しました。木の大きさはさほど大きくありませんが、数が多い。ものめずらしさに、ちょっと途中下車してみることにしました。
「中央図書館前」でいったん下車
停留所の名前は「中央図書館前」。雪つりされているのは、図書館の木でした。札幌の街なかでみかける雪つりは、観光を意識したものではまったくないようです。
おおらかな雪つり
こちらは、ざっくりまとめてある
雪の重みから木をまもるため、ただただ実直に施してあります。これは、イチイの木でしょうか。
雪つりの木に、赤い実。イチイかな?
ちょちょいと簡単にしばっただけに見えるものもあります。ずらりと並ぶようすが、生き物のようにも感じるのは、わたしだけ? 中部地方そだちの筆者には、雪のある風景がとにかくめずらしく、現実でないような錯覚におちいります。
きたきた。同方向へ、再出発です
しげしげと眺めたのち、もう一度、同じ方向の路面電車にのりなおしです。揺られることさらに15分、「中島公園通」停留所に到着しました。もっとのっていたかった路面電車とも、ここでおわかれです。
おりま〜す!
豊平館の最寄り停留所「中島公園通」
豊平館をしめす看板が
路面電車をおりて、豊平館へ
東方向へ徒歩で5分ほどいくと、豊平館のある中島公園につくとの検索結果です。つもった雪をふみわけて、サック、サック。ほどなく中島公園に入りました。
中島公園は広い。公園も北海道サイズかな
公園内の雪つりもかわいい
地図には、公園のなかにおおきな池があるとかいてあります。さて、どこだろう? めのまえに広がる銀世界を、目をこらして探していると、ふと気づきました。もしかして、池も白い……? そう、おおきな池はすっかり凍って、雪景色の一部になっていました。
池も凍り、一面まっしろ
その池をのぞんで立つのが、目的地の豊平館です。出発から50分ほどの小旅行でたどりついたその建物は、洒脱な洋館でした。雪のなかに、白とライトブルー。目のさめるような色あいです。
顔をのぞかせた豊平館
白地にライトブルーがまぶしい
柱の装飾なども手がこんでいる
豊平館は明治13年、北方開拓を目的として置かれた官庁・北海道開拓使によって作られた、洋造ホテルでした。完成の翌年には、明治天皇の一行も宿泊。館内には、天皇の宿泊部屋をそのまま残しています。
エントランスを通って内部に入ると、赤い絨毯をしきつめた重厚な空間が出迎えます。外の冷え込みとはうってかわって、じんわりとあたたかい。
床はすべて、花柄の赤い絨毯。すてき!
入り口すぐの場所。ここから各所へ
文字盤の美しい柱時計
重厚な手すりの階段
使用人部屋だった「扶養の間」
平成23年までは、市営の結婚式場として活用されていたそうです。リニューアル工事を経て、いまでは歴史をそのまま伝えるミュージアムとして一般公開されています。館内は、30分あれば余裕をのこして見終えられるほどの手ごろな広さ。ていねいに作られ、手入れされてきた館内のあちこちを見てまわるのが、思いのほかワクワクします。いかつい暖炉、やわらかな光を放つ照明……。建築当時のまま保たれているものも、多いようでした。
大勢を収容できる広間
暖炉は復元。高い技術で漆喰を大理石風に
結婚式場の記憶を伝える上映も
時代を物語るシャンデリアがてらす
花びらのような意匠が可憐
歴史の香りにたゆたうひととき
豊平館の目玉、天皇行幸の際に宿泊所となったのが、こちらの部屋です。寝間は意外と小さな空間で驚きましたが、天蓋つきのベッドがなんだかかわいらしいなあ。しかめつらの明治天皇が、ここで休んだのを想像すると、くすりと笑いがこみ上げます。
明治天皇が宿泊した「梅の間」
天蓋つきの小さなベッド
現在では、1階でケーキとお茶が楽しめる場も。こしかけてひと息つき、窓からゆっくり、まっしろな世界を堪能。そろそろ、この小旅行もおしまいです。
おいしそうなケーキで一服
はじめての場所で、慣れない雪をかきわけての路面電車さんぽ。最後は歴史の香りのなかで、ほっと一服できました。しらない日本、まだまだあるなあ。つぎはどこへいこうかな。
雪の夕暮れに、さんぽもおしまい
この記事を書いた人
てらしまちはる Chiharu Terashima |ライター
児童書編集を経て、フリーライター。専門分野である絵本、こどもアプリの話題を中心に、ウェブ媒体や雑誌で執筆中。2016年より始めたイタリア・ボローニャブックフェア独自取材を今年『ボローニャてくてく通信』として発表する。
ボローニャてくてく通信
・Facebook:https://www.facebook.com/bolognatektek/
(2018/3/1公開)
・公式HP:http://terashimachiharu.com/
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