どこで作られてるの? はにわ・土偶のふるさと探訪旅
2017年2月1日|てらしまちはる
ちかごろ、東京都内の雑貨店でミニチュアのはにわ・土偶をよく見かけます。かなり細かく作られているし、ちゃんと焼き物です。いったい、だれがどこで作っているんだろう?
立ち並ぶはにわ
ぽっかり口をあけたはにわや、教科書で見覚えのある遮光器土偶、ハート型土偶……。かわいらしい雑貨たちのはざまで、彼らは力強く異彩を放っているのです。みなぎる生命力とスゴみ、人の手のぬくもりに、目が離せません。
土偶「縄文のビーナス」のレプリカ
どうしても気になった筆者は、ある日お店の人に思いきって聞いてみました。するとどうやら作り手は「大塚はにわ店」という工房にいるらしい。でも、お店の人も直接仕入れてはいないので、工房名以外の情報がわからないとのこと。
遮光器土偶のレプリカ
家に戻って名前をもとに調べてみると、どうやら栃木県益子にあるようです。それだけはわかりましたが、やっぱりあまり情報がありません。これはなんだか、おもしろそうな予感。作られる現場を自分の目で確かめたくなって、その場で電話をしていました。
はにわが目印の大塚はにわ店
栃木県芳賀郡益子町。江戸時代から焼き物がはじまったというこの辺りは、現在も陶芸店が軒をつらねます。城内坂とよばれる地域も、店舗の多い場所です。
そんな通りを歩いていると、はにわや土偶が店先にずらりと並ぶ光景を発見! そう、ここが大塚はにわ店です。
看板の下にもはにわたちが
「よくこんな形、考えだしたなと思うよ。なにもないところから作ってみろといわれても、自分じゃできませんね」。手にした土偶をまっすぐに見つめながら、しかし大塚明さんは、たのしげな表情でつぶやきます。
大塚明さんと奥様
はにわや土偶の職人である大塚さんは、この道50年。創業からしばらくは食器を専門にあつかう店でしたが、先代である父が昭和35年ごろからはにわを売り出したのが、制作のはじまりでした。おりしも、東京オリンピックを目前に控えた景気のいい時代。はにわは室内や庭の装飾としてよく売れ、しだいに専門に作るようになったのだそうです。土偶作りもその過程ではじまりました。
店内には土偶やはにわが所狭しと
小さくてリーズナブルな土偶も
手びねりの大きなはにわ「鷹匠」
作り方は、一体ずつ手びねりするか、手作りの型で量産するタイプの2通り。「手びねりは発掘される土偶やはにわと同じやり方です。大きい作品は、粘土から形にして乾燥させ、窯で焼くまでに1体で12〜3日かかります」。
手びねりは1カ月に3体程度、型抜きは3日で10〜15個ほどができるといいます。店の裏手の作業場で、夫婦2人でもくもくと生み出します。
犬や鳥のはにわがいっぱい
土偶とはにわは、同じく日本から出土します。でも、実は両者にははっきりと違いがあります。
縄文時代に、縄文人によって作られたのが土偶。一方、大陸からの渡来人が活躍する弥生時代に作られたのがはにわです。
デザインはよく見ると対照的で、細かな装飾が多い土偶にくらべ、はにわはすっきりとシンプルな作りのものが多いといえます。
鳥のはにわ
「はにわは意外と童顔で、表情がひょうきん。目がつりあがっているものは、なくはないけれど少ないね。馬や犬、鳥なんかのはにわも多いんですよ。犬なんて、舌を出してハアハアやってるのが出土してる。そういうのを見ると、昔の人はよく観察してるなあと感心しますよ」。
でも、猫のはにわはないのだそうです。いわれてみれば、見たことないかも……。猫はつまり、弥生時代より後に日本列島にきた動物ということになります。歴史の証拠を見つけた気分になって、ワクワク。
工房ではにわを制作する大塚さん
手びねり作品は内側をみると形跡がよくわかる
奥様が型抜き作品をおもに担当
対して、土偶では「縄文のビーナス」などに代表される、妊婦のような丸みのある形が特徴的です。装飾もかなり細かい。「作る前にはかならず、本で調べたり博物館に出かけて実物を観察します。復元されているものは、そこも含めて再現しますね」。
年季の入った、粘土をこねる機械
窯に入るのをまつ
粘土をこねて、形を整え、乾燥させて、800度の窯で焼く。それが毎日、くりかえされます。
「作っても作っても、悪いとこばっかり目立っちゃって。今回はできたぞと思っても、静かな気持ちで眺めると、やっぱり考えはじめてしまうんです。ここをもっとこうしよう、ってね。だから終わりがないんです」。そういいながらも、大塚さんはどことなくうれしそう。この仕事にまじめに向き合う、なによりの証拠です。
遮光器土偶も。工房はつねに湿り気がある
大塚さん夫妻の手から生まれ、東京の店先まで旅してきた土偶やはにわ。それを見つけた筆者が目を離せなくなったのは、きっと大量生産にはない手作りのあたたかみを強く感じさせるからでしょう。
実直な作り手のもとからはばたいた作品たちは、買い求められた先の人の暮らしを、あたたかなまなざしで見守ってくれるはず。現代の職人による土偶やはにわは、太古の人々がひねりだしたものと同じく、よりよい日々への祈りがつまったものに思えます。
手びねり作品を作る台
手作りの型がたくさん
手間ひまかけた作品が店頭に
雑貨屋に土偶? はにわ!?
ぽっかり口をあけたはにわや、教科書で見覚えのある遮光器土偶、ハート型土偶……。かわいらしい雑貨たちのはざまで、彼らは力強く異彩を放っているのです。みなぎる生命力とスゴみ、人の手のぬくもりに、目が離せません。
土偶「縄文のビーナス」のレプリカ
どうしても気になった筆者は、ある日お店の人に思いきって聞いてみました。するとどうやら作り手は「大塚はにわ店」という工房にいるらしい。でも、お店の人も直接仕入れてはいないので、工房名以外の情報がわからないとのこと。
遮光器土偶のレプリカ
家に戻って名前をもとに調べてみると、どうやら栃木県益子にあるようです。それだけはわかりましたが、やっぱりあまり情報がありません。これはなんだか、おもしろそうな予感。作られる現場を自分の目で確かめたくなって、その場で電話をしていました。
はにわが目印の大塚はにわ店
ふるさとは益子だった
栃木県芳賀郡益子町。江戸時代から焼き物がはじまったというこの辺りは、現在も陶芸店が軒をつらねます。城内坂とよばれる地域も、店舗の多い場所です。
そんな通りを歩いていると、はにわや土偶が店先にずらりと並ぶ光景を発見! そう、ここが大塚はにわ店です。
看板の下にもはにわたちが
まじめで寡黙なはにわ職人
「よくこんな形、考えだしたなと思うよ。なにもないところから作ってみろといわれても、自分じゃできませんね」。手にした土偶をまっすぐに見つめながら、しかし大塚明さんは、たのしげな表情でつぶやきます。
大塚明さんと奥様
はにわや土偶の職人である大塚さんは、この道50年。創業からしばらくは食器を専門にあつかう店でしたが、先代である父が昭和35年ごろからはにわを売り出したのが、制作のはじまりでした。おりしも、東京オリンピックを目前に控えた景気のいい時代。はにわは室内や庭の装飾としてよく売れ、しだいに専門に作るようになったのだそうです。土偶作りもその過程ではじまりました。
店内には土偶やはにわが所狭しと
小さくてリーズナブルな土偶も
手びねりの大きなはにわ「鷹匠」
作り方は、一体ずつ手びねりするか、手作りの型で量産するタイプの2通り。「手びねりは発掘される土偶やはにわと同じやり方です。大きい作品は、粘土から形にして乾燥させ、窯で焼くまでに1体で12〜3日かかります」。
手びねりは1カ月に3体程度、型抜きは3日で10〜15個ほどができるといいます。店の裏手の作業場で、夫婦2人でもくもくと生み出します。
犬や鳥のはにわがいっぱい
知ってる? 土偶とはにわのちがい
土偶とはにわは、同じく日本から出土します。でも、実は両者にははっきりと違いがあります。
縄文時代に、縄文人によって作られたのが土偶。一方、大陸からの渡来人が活躍する弥生時代に作られたのがはにわです。
デザインはよく見ると対照的で、細かな装飾が多い土偶にくらべ、はにわはすっきりとシンプルな作りのものが多いといえます。
鳥のはにわ
「はにわは意外と童顔で、表情がひょうきん。目がつりあがっているものは、なくはないけれど少ないね。馬や犬、鳥なんかのはにわも多いんですよ。犬なんて、舌を出してハアハアやってるのが出土してる。そういうのを見ると、昔の人はよく観察してるなあと感心しますよ」。
でも、猫のはにわはないのだそうです。いわれてみれば、見たことないかも……。猫はつまり、弥生時代より後に日本列島にきた動物ということになります。歴史の証拠を見つけた気分になって、ワクワク。
工房ではにわを制作する大塚さん
手びねり作品は内側をみると形跡がよくわかる
奥様が型抜き作品をおもに担当
対して、土偶では「縄文のビーナス」などに代表される、妊婦のような丸みのある形が特徴的です。装飾もかなり細かい。「作る前にはかならず、本で調べたり博物館に出かけて実物を観察します。復元されているものは、そこも含めて再現しますね」。
年季の入った、粘土をこねる機械
窯に入るのをまつ
おわりのない、ものづくりの道
粘土をこねて、形を整え、乾燥させて、800度の窯で焼く。それが毎日、くりかえされます。
「作っても作っても、悪いとこばっかり目立っちゃって。今回はできたぞと思っても、静かな気持ちで眺めると、やっぱり考えはじめてしまうんです。ここをもっとこうしよう、ってね。だから終わりがないんです」。そういいながらも、大塚さんはどことなくうれしそう。この仕事にまじめに向き合う、なによりの証拠です。
遮光器土偶も。工房はつねに湿り気がある
大塚さん夫妻の手から生まれ、東京の店先まで旅してきた土偶やはにわ。それを見つけた筆者が目を離せなくなったのは、きっと大量生産にはない手作りのあたたかみを強く感じさせるからでしょう。
実直な作り手のもとからはばたいた作品たちは、買い求められた先の人の暮らしを、あたたかなまなざしで見守ってくれるはず。現代の職人による土偶やはにわは、太古の人々がひねりだしたものと同じく、よりよい日々への祈りがつまったものに思えます。
手びねり作品を作る台
手作りの型がたくさん
手間ひまかけた作品が店頭に
この記事を書いた人
てらしまちはる Chiharu Terashima |ライター
児童書編集を経て、フリーライター。専門分野である絵本、こどもアプリの話題を中心に、ウェブ媒体や雑誌で執筆中。2016年より始めたイタリア・ボローニャブックフェア独自取材を今年『ボローニャてくてく通信』として発表する。
ボローニャてくてく通信
・Facebook:https://www.facebook.com/bolognatektek/
(2018/3/1公開)
・公式HP:http://terashimachiharu.com/
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