日本の魚醤 〜さかなのうまみ、ギュッと。〜
2017年1月25日|渡邊晃子
和食の定番調味料と言えば大豆醤油…。ですが、日本には、魚で作る“魚醤(ぎょしょう)”もたくさんあるんです。そこで、今回は家庭でも使いやすい“魚醤”をピックアップしました!
魚醤と言えば、タイの「ナンプラー」やベトナムの「ニョクマム」を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか?実は、日本でもさまざまな魚醤が作られています。よく知られているものは、秋田県の「しょっつる」、石川県の「いしる」が有名ですね。
大豆と小麦と麹を塩水で発酵させる大豆醤油に対し、生の魚を塩漬けにして発酵させたものが魚醤。さきほど挙げた「しょっつる」はハタハタ、「いしる」はイカやイワシ、そのほか、イカナゴ、サバ、サケ、アジ、マグロなどを原料として作ります。
しかし、魚醤は「魚臭くクセがあって苦手…」、「家庭では使いづらい…」と思っている人も多いでしょう。確かに、味もニオイも濃厚ですが、その分、うまみも濃厚なのが魚醤です。ひとたび料理に使えば、その深いうまみのとりこになってしまうかもしれませんよ。
■「鮭醤油(さけしょうゆ)」(北海道石狩市、佐藤水産)
北海道産の天然鮭と麹と塩を、昔ながらの杉桶に仕込んで発酵させた魚醤。鮭の加工品を作る際、内臓や頭、白子などのアラがたくさん出るため、それを利用して作っているそう。大豆醤油に近い香りでクセが少なく、初心者向けの魚醤です。
といっても、大豆醤油とは一味違い、ほどよく感じる鮭のうまみが特徴。かけ醤油として、卵かけご飯や焼おにぎり、冷奴、お刺身などに使えば、いつもと違った味が楽しめます。そのほか、煮物や炒め物などで、醤油の代わりに使ってみましょう。
■「鯛醤(たいびしお)」(三重県伊勢市、伊勢醤油本舗)
毎年、伊勢神宮に「伊勢醤油」を奉納している伊勢醤油本舗が、醤油作りの技術を生かして作った魚醤。三重県で獲れた真鯛を使っており、醤油というより白だしのような淡い色味です。まさに鯛そのものをギュッと濃縮したような味わいが特徴です。
料理の際は、白だしのような使い方が最適。鯛のダシがきいた上品な味わいなので、家庭料理が料亭のような本格的な味に様変わりします。まずはお吸い物、そのほか、お茶漬け、だし巻き卵、茶碗蒸し、白身魚の煮つけで試してみてください。
■「鮎魚醤(あゆぎょしょう)」(大分県日田市、まるはら)
古くから鮎の漁や養殖が盛んだった大分県日田市で、鮎と塩のみを熟成させて作った、世界でも珍しい淡水魚の魚醤。鮎は海水魚が持つ微生物を持っていないため、魚醤特有の魚臭さや発酵臭が少なく、香りが良いのが特徴です。
琥珀色の「鮎魚醤」は、フランス・パリの三ツ星レストランでも使われているそう。いつもの和食はもちろん、イタリアンやフレンチなど料理のジャンルを選びません。カルパッチョのソースやサラダのドレッシングにも使える万能調味料です。
■「きびなご魚醤」(高知県幡多郡黒潮町、土佐佐賀産直出荷組合)
高知県産のきびなごを天日塩に浸け込み、一年以上ねかせてじっくり作った魚醤。社員のほとんどが町のお母さんたちという土佐佐賀産直では、地元産にこだわった製品作りをしています。きびなごのうまみが凝縮されたまろやかな味わいです。
少しトロッとした「きびなご魚醤」は、一振りするだけで料理を奥行きのある味にしてくれます。アサリの酒蒸し、タコのマリネ、エビのカレーなどの魚介料理、チャーハンやラーメンなどパンチをきかせたい時の隠し味にピッタリです。
日本の魚醤を楽しもう
魚の“うまみ”が詰まった魚醤は、アミノ酸の一種であるペプチドが豊富。食材の臭いを消す力が強く、かつ食材をしっとりと軟らかくする作用があるため、魚や肉の下味付けにもピッタリなんです。「魚臭くクセがある」と思っていた魚醤がそんな働きをするなんて驚きですね!みなさんもぜひ、ご家庭で味わってみてください。
この記事を書いた人
渡邊晃子 Akiko Watanabe |ライター
フリーのライター、インタビュアー、フォトグラファーとして活動。 主に芸能記事を手掛ける。現在は、自然豊かな熊本で子育て中。 国内外の古くて変わったモノが好き。
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