たわし界の風雲児! 亀の子たわしの奥深い世界
2016年12月21日|てらしまちはる
暮れも近づいてきました。一年の汚れをすっきり払う大掃除で、活躍する道具の一つが「たわし」。なかでも定番の「亀の子束子(たわし)」は、100年以上の伝統ある商品でありながら、現代にフィットした取り組みが注目されています。
老若男女が集まる「たわし屋」
東京は台東区谷中。知る人ぞ知る裏道・通称「へび道」(藍染川跡)の途中に、亀の子束子 谷中店はあります。
亀の子束子谷中店の入り口(画像提供:亀の子束子)
店内はおしゃれな雑貨店のようだ(画像提供:亀の子束子)
イマドキの雑貨店風の、おしゃれな店構え。大きなガラスドアから中をのぞくと、棚に所狭しと並んだ亀の子束子が目に飛び込みます。金物屋ではなく、たわししか扱わない「たわし屋」です。
「通りがかりのおじいちゃんが、ドアを開けて『たわしだけで儲かってるのかー?』と心配の声をかけてくださったことも(笑)。若者からお年寄り、女性も男性も外国人の方も、訪れる人の幅が実に広いお店です」とは、谷中店店長の志垣里佳さんです。
定番の「亀の子束子」(画像提供:亀の子束子)
彼女はいわば、亀の子束子の生き字引。数ある商品の特徴を一つ一つそらんじているばかりか、そのほとんどを実際にプライベートで使用しています。「上履き洗い用のたわしだけれど、首の曲り具合がシンク掃除にぴったり」「これは繊維が柔らかいから、トマトを洗っても傷つかない」……。暮らしにすぐ活かせる有用な情報を、たくみな話術とともに披露してくれます。
5分も聞けば誰でも、全部同じに見えたたわしが、別々の個性を持つことに気づいてしまう。ちなみに「儲かってるか」のおじいちゃんもそのようで、後日お友だちを連れて再訪してくれたんだとか。
定番の「亀の子束子」&オススメ4選
亀の子束子は、厳選されたパームやしの繊維がしっかりと立ち上がっているので、炊事や洗濯の場面での汚れ落ちが抜群。「亀の子は他店の三倍持つ」という声もあがるほど、耐久性もあります。
でも、それだけじゃありません。定番以外にも、たくさんの個性的なたわし達を知ってほしい……! 志垣さんおすすめの4商品を、一挙にご紹介しましょう。
●棕櫚たわし極〆 NO.3
「棕櫚たわし極〆 NO.3」
上記のパームやしより柔らかい、棕櫚の繊維でできています。野菜の泥おとしや繊細な食器洗いにも重宝。NO.3はたわしの側面に帯縄をかけているため、「分け目」のような状態がぐるりと一周しています。食器洗いの際、器のふちをここに沿わせて洗えば、隅々まですっきり。
●ジャンプ
柄の色が多彩な「ジャンプ」(画像提供:亀の子束子)
1967年初生産から50年の歴史を誇る、上履き洗いの決定版。たわしと柄の角度が、靴を洗うのに最適なように作られています。指置き位置や靴裏の小石をとりのぞくヘラなど、ニクい心遣いも。また、シンクの生ゴミ受けの掃除にこのたわしの角度だと使い勝手がいいほか、シャツの襟洗いなどにも応用がききます。
指置き位置で作業がラクに
●白いたわし サイザル麻(小)
「白いたわし サイザル麻(小)」
柔らかいサイザル麻で作った、ベーグル型のたわし。中央に穴があることで、密な繊維でも乾きが早い。トマトすら洗えるとはこの商品のことで、ガラスなどの繊細な食器洗いも大丈夫。肌を軽くマッサージしても痛くないので、身体洗い用に買い求める人も。
●カルカヤたわし(小)
「カルカヤたわし(小)」はめずらしい形
カルカヤという植物の根をたばねた、堅さのあるたわし。鍋のガンコなこびりつき、茶渋などを落とすのに威力を発揮。両端がすり減ってきたら、金属の輪っかを取り外して引き続き使える。お財布にも環境にもやさしい。
ね、意外と用途が違うものでしょう? そう思い始めたあなたは、ディープで楽しいたわしの世界にすでに片足を踏み入れています。
谷中店内には棕櫚などの原料も
創業100年超の新たな挑戦
亀の子束子西尾商店は、1907年に創業しました。紹介したものはどれも、長い歴史のなかで考えだされ、愛されてきた商品。しかし、流れのはやい現代社会において、伝統だけでは生き残れないのも厳しい現実です。
この会社では現社長に交替した数年前から、現代の感覚にフィットした企画を毎年リリースしてきました。柄入りで形の豊富なたわし「LIZA」シリーズや、現代人の使いやすさを求めて開発した「亀の子スポンジ」がそれです。
「亀の子スポンジ」
特に2015年登場の「亀の子スポンジ」は、2017年1月に東京で授賞式が行われる、日本パッケージデザイン大賞2017の「家庭用品、一般雑貨」部門で金賞も決定しています。使いやすさとともに、目をひくデザインが評価されました。
そしてまた、雑貨店のような谷中店出店も新たな挑戦の一つです。金物としてこれまでひとくくりに扱われてきたたわしを、単独で、しかもおしゃれな生活用品として提案するアイデアは画期的です。店舗に入れかわり立ちかわりやって来るお客さんの多くは、まさにその目新しさに引かれて入店します。
数坪の小さな店内で、ただのたわしを何気なく見る人々。しかし、ひとたび話を聞けば「されど、たわし」に早変わり。一つ一つが全部ちがう商品を、つい家で試したくなってしまう……。
日本の家庭のどこにでもあるたわしが、奥深い世界をのぞかせてくれる場所。谷中には、そんな素敵なお店がありました。
志垣里佳さん。軽快なたわしトークは一聞の価値あり
この記事を書いた人
てらしまちはる Chiharu Terashima |ライター
児童書編集を経て、フリーライター。専門分野である絵本、こどもアプリの話題を中心に、ウェブ媒体や雑誌で執筆中。2016年より始めたイタリア・ボローニャブックフェア独自取材を今年『ボローニャてくてく通信』として発表する。
ボローニャてくてく通信
・Facebook:https://www.facebook.com/bolognatektek/
(2018/3/1公開)
・公式HP:http://terashimachiharu.com/
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