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幾何学模様が美しい日本の針仕事。「こぎん刺し」のすすめ

2017年11月30日|渡邊晃子

最近、「こぎん刺し」をよく目にします。布地に細かくほどこされた刺繍は、幾何学模様が美しくとても魅力的。刺すのはとても難しそうですが、実は初心者でも挑戦しやすい針仕事なんです。

「こぎん刺し」とは?


こぎん刺し

青森県の津軽地方に伝わる刺し子の一種「こぎん刺し」。同じく青森県の「南部菱刺し」、山形県の「庄内刺し子」と並ぶ日本三大刺し子の一つです。江戸時代に生まれて約300年、暮らしの中の針仕事として受け継がれてきました。


こぎん刺し

「こぎん刺し」は、綿花が育ちにくい寒冷地で、厳しい寒さをしのぐ知恵として生まれたもの。当時の農民たちは木綿の着物を着ることが許されておらず、目の粗い麻布の着物を着ることが定められていました。そこで、布目を緻密な刺繍で埋めて、保温性と補強を高めました。


こぎん刺し

伝統的な図案は「モドコ」と呼ばれており、古くからあるものは数十種類。ハナコ(花)、マメコ(豆)、クルビカラ(くるみの殻)、ベコの足(牛の足)など身近な動植物がモチーフになっていることが多く、まさに暮らしの中で育まれたと感じることができます。

アレンジが無限大で懐の深い「こぎん刺し」


こぎん刺し

「こぎん刺し」は、並縫いのように右から左へ、布の織り目を1、3、5と奇数を数えて刺していきます。伝統的な手仕事は難しそうですが、図案を布に写さず、布目を数えて刺していくだけなので意外と簡単。


また、「モドコ」同士を組み合わせて、自由にさまざまな模様を作ることもできます。現代の生活にも取り入れやすい色使いや模様の配置で、自由にアレンジも可能。さっそく、材料を揃えて刺してみることにしました。


実際に「こぎん刺し」をやってみましょう


こぎん刺し

材料は、布目が数えやすい平織りの布、ふんわりとした質感の刺繍糸、織り糸を割らないように針先が丸い刺繍針。初心者の筆者は、すべて「こぎん刺し」用の材料を揃えました。


こぎん刺し

「こぎん刺し」は、図案を中心から上下に分けて、真ん中から刺し始めます。一列刺し終わったら布を回転させて、右から左に向かって刺していきます。


こぎん刺し

ポイントは、一針刺すごとに糸を引くこと。また、一列刺すごとに布を横に引っ張って糸こきをすると、糸のつれがなくなりきれいな仕上がりになります。


こぎん刺し

上半分を刺し終わったら、下半分を刺します。刺し終わりと刺し始めを、裏側の針目にからげて始末すると完成です。


こぎん刺し

こちらの図案は、小さい枕という意味のコマクラ。こぎん糸は、ふんわりとした太めの糸なので立体感がある仕上がりになります。


こぎん刺し

また、刺し終わった裏側は、表側の模様がそっくり反転しています。表も裏も美しいのが「こぎん刺し」の特徴です。


津軽弁がかわいいさまざまな「モドコ」


こぎん刺し

まずは「モドコ」を10種類やってみました。上段左から、ベコの足(牛の足)、コマクラ(小さい枕)、クルビカラ(くるみの殻)、マメコ(豆)を4つ並べた四枚菱、猫のマナグ(猫の目)、下段左から、フクベ(ひょうたん)、猫の足、ヨツコゴリ(氷)、てこな(蝶々)、とんぼ。


これらは、一つのモチーフですが、「モドコ」を組み合わせることによってデザインは無限に広がります。また、「こぎん刺し」には、一つの模様ごとに刺していく「模様刺し」、布いっぱいに細かく刺す「総刺し」があります。


パーツを使って「こぎん刺し」を毎日の小物に


こぎん刺し

今回はパーツを使って、くるみボタンとがま口を作りました。作るのが簡単なくるみボタンは、ブローチやイヤリング、ヘアアクセサリーなどに活用できるのでおすすめです。


こぎん刺し

白地に赤は、ハナコ(花)とカチャラズ(マメコの反転)、水色と青色は同じ名前でも図案が異なるウロコ。明るい色使いと模様を組み合わせて、モダンな仕上がりになりました。


こぎん刺し

厳しい寒さをしのぐために知恵をしぼった「こぎん刺し」は、農民の晴れ着としても活躍したそう。だからこそ、美しい「モドコ」の数々が生まれ、私たちを魅了し続けています。当時の人々の生活に想いをはせながら、静かにチクチクと針をすすめたひとときでした。


この記事を書いた人

渡邊晃子 Akiko Watanabe |ライター

フリーのライター、インタビュアー、フォトグラファーとして活動。 主に芸能記事を手掛ける。現在は、自然豊かな熊本で子育て中。 国内外の古くて変わったモノが好き。

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