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ぼちぼち、ぶらぶら。日暮里レトロさんぽ

2017年7月19日|寺島知春

天気のいい日に、日暮里をぶらぶら散歩。東京の街中にも、レトロな日本を感じるスポットがたくさんありました。

SNSで偶然見かけた、気になるガラスと布作品の展示。開催ギャラリーが日暮里なので、ちょっと遠いかなと思っていたけれど、そういえば明日の午後はぽっかり予定が空いているのを思い出しました。

展示のスタートも、ちょうど明日。少し足をのばして、久しぶりに下町を散歩してみよう。


駅改札左手の石段をのぼる 駅改札左手の石段をのぼる


ある意味、涼しい遊び


JR日暮里駅の改札を出て左に進むと、すぐに上へと続く石段が見えてきます。それを登ってしばらく進めば、まもなく谷中霊園の中。

霊園というとちょっと怖い気もするけれど、ここは緑も人通りも多く、お墓というより公園に近い感じです。霊園を通るこの道にも、犬の散歩の人や楽器を担いだ学生さん、サラリーマンなどが行きかいます。


緑が多く、広々とした霊園の道 緑が多く、広々とした霊園の道


そういえば昔、東京の古い霊園の楽しみ方を知り合いに教えてもらったことがあったな。教科書に出てくるような人物のお墓を、散歩しながら巡るというものだったっけ。


それが江戸時代に始まった古い文人趣味で、掃苔(そうたい)というものだと知ったのは、もう少し後でした。平賀源内なんかもやっていたようで、名の通った人のお墓をそっと巡り、お参りするもの。最近ではそれがひそかなブームになっているともいわれ、「墓マイラー」なる人もいるようです。


「日本の植物学の父」牧野富太郎のお墓をしめす案内の石 「日本の植物学の父」牧野富太郎のお墓をしめす案内の石


この谷中霊園には、そんなお参りの人々にむけ、他では見ないあるものを備えたお墓がちらほら見られます。それは名刺入れ。訪れた人が、自分の名刺を入れられるボックスが設置されているのです。


個々に設けられた名刺入れ 個々に設けられた名刺入れ


ほら、ここにもあった。通りの脇のお墓を、名刺入れを探しながら歩くと、まもなく霊園を抜けて、下町の香り漂う小道に出ました。


霊園出口でねこが見送り 霊園出口でねこが見送り


古民家でガラス作品にいやされる


目当てのギャラリーは、少し行った角を左に曲がるんだよな……あ、ありました。ギャラリーをふくんだ複合施設「上野桜木あたり」です。

住所が上野桜木だから、この名前。ギャラリーの他に、ビアホールなどが入っています。 昭和13年に建てられた三軒家をリノベーションした、レトロな建物です。


道の奥に目的のギャラリーがみえた 道の奥に目的のギャラリーがみえた


複合施設「上野桜木あたり」 複合施設「上野桜木あたり」


金曜の夕方前だけど、ビアホールにはすでに満員に近いお客さんが。ビールグラスをかたむけるほくほく顔を横目に、こちらは奥のギャラリーへと進みます。


目当ての展示「布と硝子展」は、今日からのスタート。石河美和子さんの型染めと、手塚えりかさんのガラス作品が、畳の上を鮮やかにいろどります。


桃色がうつくしい小花瓶 桃色がうつくしい小花瓶


まるみのある輝きを放つ、器の数々 まるみのある輝きを放つ、器の数々


草原を思わせる緑色のコップ 草原を思わせる緑色のコップ


私が心惹かれたのは、入り口近くの棚に飾ってあった、手塚さん作の緑色のコップ。表面には草原を思わせる細かな飾りがあしらわれ、それをコップの内側から見ると、 柔らかく色が混ざってとても美しいのです。


ひととき、その前でじっと見ていました。今日はこれに出会えただけでも、ここに来た甲斐があったかも。 最近仕事が忙しかったから、こんなふうにぼーっと何かを見る時間をあまりもてずにいました。やっぱり、作らなきゃな、余裕。


左奥がギャラリーだった 左奥がギャラリーだった


念願の喫茶店へ


しばらくしてギャラリーを出ました。少し歩き疲れています。そういえばこの近くに、ながらく行きたかった喫茶店「カヤバ珈琲」があったような。検索してみると、やっぱりご近所さんでした。歩いて5分もかからないみたい。


いつも混んでいて、実は何度も来てはあきらめを繰り返してきたお店です。でも金曜とはいえ平日の、夕方前の半端な時間。もしかしたら、入れるかもしれません。迷わずその方向に歩を進めました。


道中にみえたスカイザバスハウス 道中にみえたスカイザバスハウス


スカイザバスハウスを正面から スカイザバスハウスを正面から


少し行くと、途中に別のギャラリー「スカイザバスハウス」が見えます。こちらもまた200年の歴史を持つ銭湯「柏湯」を改装し、1993年から営業する現代美術のギャラリーです。


古い建物を壊してしまうのではなく、現代の用途にうまく活用し直すこと。温故知新の姿勢は、この界隈に新たな人の流れを作り出しています。


昔ながらのせんべい屋さん 昔ながらのせんべい屋さん


ギャラリーに使われる商店跡 ギャラリーに使われる商店跡


桃色がうつくしい小花瓶 カヤバ珈琲の入り口


ビルの谷間にちょこんとたつカヤバ珈琲 ビルの谷間にちょこんとたつカヤバ珈琲


ほどなくしてカヤバ珈琲に到着しました。さて、今日は入れるかな?

そっとドアを開けると、長い行列もなくすんなり入れました。ついに念願達成です。名物のたまごサンドと、ついでにビールも頼んで、ひとり小声で「おつかれさーん」。ここ最近の疲れが、冷たいビールで一気に流れていきます。


名物のたまごサンド 名物のたまごサンド


窓からの風が、ふわっと頬をなでました。 カヤバ珈琲もまた、昭和13年創業。いっとき店を閉めていましたが、リノベーションの末、平成21年に復活しています。


店内のうす暗さが小気味よく、体がすっぽり包まれたみたい。もしかしたら私にはまったく新しいものよりも、少し古くて人の気配が感じられるものの方が馴染むのかもしれません。


今週の仕事はもうおわり。おいかけてくるもののない時間なんて、久しぶりです。今日はもう少しここで、羽を休めることにしよう。


カヤバ珈琲向かいにもレトロな商家建築が カヤバ珈琲向かいにもレトロな商家建築が


この記事を書いた人

寺島知春 Chiharu Terashima |ライター/エッセイスト/絵本こどもアプリ評論家

絵本出版社編集を経てフリー。専門は絵本、こどもアプリ。2016年秋には『AERA』(2016/9/19号、朝日新聞出版)特集内に絵本選書コメントが取り上げられるなど、雑誌やwebで活動中。

公式HP:http://terashimachiharu.com/

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