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ポーと鳴く、白い鳩人形。 いったいどこから? 土笛いろいろ

2016年11月9日|寺島知春

土笛ときくと、どんなイメージがありますか? 「地味でぱっとしない」と思う方もいらっしゃるのでは。でも、ほんとうは字面よりずっと、かわいいヤツらなんです。

鳥好き、鳩笛に出会う


先日、なにげなく雑貨屋をブラついていたら、とんでもなくかわいらしい何かが目に入りました。白くて鳩みたいな形をした鳥が、つぶらな瞳でこっちを見ている……。

鳩笛
置かれた棚に近寄ると、それは土でできた笛でした。「鳩笛」と書いたプレートがあるので、どうやら鳩を模したもので間違いないようです。特に笛が吹きたいわけでもありませんでしたが、もともと鳥グッズに目がない私。財布のひもをゆるめて、鳩笛を連れ帰ったのでした。

あのこは尾崎人形


尾崎人形 (画像は神埼市観光協会より引用)

帰宅後に調べてみると、どうやら「尾崎人形」という佐賀の郷土玩具のようです。元寇で捕虜となった蒙古軍の兵士が、祖国をしのんで作ったのがはじまりと伝えられます。形は約20種類。鳩笛は特に「テテップウ」と呼ばれ、子どもたちに人気のある形なんですって。一度は後継者が廃れたものの、今では生産が復活したというエピソードもありました。ちなみに、吹くと低い鳩の鳴き声のような音がでます。音階でいうと「♯ファ」。

尾崎人形の鳩笛
飽きずに眺めていて、ふと「鳩笛や土笛って、他の土地にもかわいいものがあるのかな」という疑問が。たしかめるべく、早速インターネットで検索してみました。

すると、いくつもヒットします。そのなかに、ちょっと気になる鳩笛が。京都・三宅八幡神社のものです。

ちょいコワ!? 三宅八幡の鳩笛


三宅八幡神社の鳩笛 三宅八幡神社の鳩笛
(画像はBlue Signalより引用)


ちょぼちょぼとつけられた目や口が、少し怖くて、でもかわいい。三宅八幡神社は子どもの守り神として知られる神社だそうです。一方で、境内いたるところに鳩モチーフがちりばめられているのも有名です。

三宅八幡神社の「狛鳩」 三宅八幡神社の「狛鳩」
(画像は京都非観光名所案内より引用)


この鳩笛は子どものかんの虫のお守りでした。昔から、かんの虫には土を舐めさせると治ると信じられていたとのこと。それで、土笛なんですね。

さて、興奮さめやらぬ後日。「鳩笛って知ってる?」と友人宅で口火を切ったところ、またしてもうれしい出会いがありました。

 「土笛に白や赤、黄色などの色がつけてあって、鳩の形をしている」と尾崎人形の鳩笛の形状を説明していたら、友人が「あれ? うちにも似たのがあるよ」というのです。おもちゃが入った箱をごそごそ……。すぐに、そっくりな鳩笛が出てきました。

下川原焼の鳩笛
でも、よく見るとこちらはひと回り小さく、表面に光沢があります。着色の仕方もちょっと違うような? 吹くと、尾崎人形より高い「レ」の音で鳴いてくれました。

判明! 青森の焼き物だった


買い求めたときのことなどを聞き、その場で調べてみると、青森県の下川原焼だとわかりました。似ていると思ったら、佐賀とはずいぶん離れた土地のものだったことに驚きです。こちらは津軽藩で、冬場に製陶作業ができなくなる間の生産品として生まれたそうです。

下川原焼にも鳩笛以外の形状がたくさんありました。鳩笛のように、色鮮やかで表面に美しい光沢があるのが共通しています。飾るだけで、家の中がぱっと明るくなりそう。

下川原焼いろいろ
下川原焼いろいろ 下川原焼いろいろ
(画像は青森デスティネーションキャンペーンblogより引用)

ひょんなことから、ちょっとのぞいた土笛の世界。なんだか深くて、シブカワでした。あなたの回りにも気になる笛、ありませんか?

尾崎人形と下川原焼<br>
尾崎人形と下川原焼<br>
尾崎人形と下川原焼


この記事を書いた人

寺島知春 Chiharu Terashima |ライター/エッセイスト/絵本こどもアプリ評論家

絵本出版社編集を経てフリー。専門は絵本、こどもアプリ。2016年秋には『AERA』(2016/9/19号、朝日新聞出版)特集内に絵本選書コメントが取り上げられるなど、雑誌やwebで活動中。

公式HP:http://terashimachiharu.com/

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