房総の岬で結ぶ「水引毬かんざし」
2016年8月18日|てらしまちはる

日本人の暮らしに、今も息づく「水引」文化。祝儀袋や贈答品の包装で見かけますね。でも、それ以外の場面で目にしたことは……? 房総半島の岬で女性作家が手作りする、繊細な水引のかんざしを紹介します。
飛鳥時代から伝わる伝統
水引という単語を辞書で引くと―—。「進物の包みにかける、紙ひも」(デイリーコンサイス国語辞典/三省堂)とあります。和紙を縒り、糊で固めてひも状にしたものが、材料としての水引。色や本数、結びを違えて、贈る相手へのメッセージを込めます。
水引の始まりは、なんと飛鳥時代。遣隋使・小野妹子が持ち帰った随からの贈り物に、紅白の麻ひもがかけられていたのが起源といわれます。以降宮中へと広まり、室町時代に和紙が使われるようになったとか。現在、生産の中心は長野・飯田、石川・金沢、愛媛です。
房総の岬に水引職人あり
ところかわって、千葉県は館山市。海が香る房総半島の岬で、伝統ある水引を独自に進化させる女性作家がいます。みこのさんが、その人です。
彼女が作るのは「水引毬かんざし」を始めとする、アクセサリーの数々。伝統を大切にしながらも、現代の感性を大胆に織り交ぜ、新たなスタイルを提案しています。だから浴衣や着物にはもちろん、ワンピースなどの洋装にもなじんで映える。合わせ方で表情を変えるみこのさんの水引作品は、想像以上に使い道の広い品です。
「水引で毬飾りの作品を作り始めたのは、成人式の髪飾りがきっかけです。地元、館山の美容室『MATURE』さんとご縁をいただき、アイデアから練っていったのが最初でした」とみこのさん。京都で水引職人として弟子入りの後、千葉に移ってから、水引を球体に仕立てる技術を独自に編み出しました。
もともと、和紙関係の伝統工芸に興味があった彼女。東京の武蔵野美術大学を卒業後、就職先未定のまま、単身京都に移り住みます。なんという思い切りのよさ! しかし、どこの工房でも募集がない現実に直面します。
水引との運命の出会い
諦めかけていた時、運命的な出会いを果たしたのが水引でした。初見はインターネット。立体造形の美しさに強い衝撃を受けた彼女は、すぐに京都の水引工房を訪ねます。「とにかく実物を見たかった」というみこのさんを、工房はその場で採用。水引職人としての修行がスタートしたのだそうです。
「凛としたラインが魅力。ひもでも針金でもこの勢いは出ないんですよ。私は昔から『線』の表現が好き、平面よりも『立体』が好き。水引は線で立体が作れる、私にぴったりの表現方法だと思っています」。
そういいながら作業するみこのさんの手元には、少しも迷いがありません。作業台からは、キラキラ光る房総の海が見えます。潮の香りが時にふわりと香る中、黙々と結び、思い切りよくしごいて形を生み出します。何度もやり直すと水引にハリがなくなるため、作業は一度で終えるのが大切。毎回が真剣勝負です。

地元にwebに、広がる輪
千葉で水引作家として活動をはじめて1年。抗いがたい作品の魅力に惹かれ、購入や問い合わせは増える一方だそうです。最近では水引毬かんざしを「結婚式で白無垢に合わせたい」という女性のお客さまからのオーダーも。
リアルの店舗では前述の美容院を皮切りに、館山市、南房総市で「みこの Fiber art」商品を扱うお店が広がっています。2016年初夏からは、髙島屋や三越伊勢丹などの百貨店の催事でも取り上げられるようになりました。さらに、各所で開くワークショップがきっかけで、水引がつなぐ人の輪はどんどん大きくなっています。

みこのさんは「水引は、美しくて奥深い日本の文化。今を生きる感性に寄り添える品を、たくさん提案したい」と意気込みます。今日も彼女は潮風の中で、丁寧な仕事を繰り返します。
みこの Fiber art 取り扱い先
CreemaMATURE
おやつマルシェ
AND SOAK
KILN&kilnyard
Holiday Photo studio(髪飾りレンタル)
百貨店催事への出展は不定期。
その他、詳細は「みこの Fiber art」Facebookページへ。
2016年秋、公式HP開設予定。





この記事を書いた人

てらしまちはる Chiharu Terashima |ライター
児童書編集を経て、フリーライター。専門分野である絵本、こどもアプリの話題を中心に、ウェブ媒体や雑誌で執筆中。2016年より始めたイタリア・ボローニャブックフェア独自取材を今年『ボローニャてくてく通信』として発表する。
ボローニャてくてく通信
・Facebook:https://www.facebook.com/bolognatektek/
(2018/3/1公開)
・公式HP:http://terashimachiharu.com/
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