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身近でかわいい!アイヌ工芸品の小物たち

2019年1月25日|てらしまちはる

アイヌの工芸品ときいて、なにを思い浮かべますか? きっと多くの人は、木彫りの熊がいちばんに最初に頭に浮かぶのではないでしょうか。でも、ちょっと待って。実はそれだけじゃないんですよ?

北海道は札幌で、かわいらしいアイヌ工芸品の小物たちに出会いました。

アイヌ工芸品といえば、木彫りの熊やコロポックルが定番ですが、いまでは現代の生活スタイルにあわせて、いろいろな商品が新たに作られているのだそうです。


目が釘づけ! タンチョウヅルのはさみ


向かい合った二羽のツルがかわいらしいはさみ 向かい合った二羽のツルがかわいらしいはさみ


札幌ではじめて目にしたアイヌ工芸品が、このタンチョウヅルのはさみ。あまりのかわいらしさに、遠くからでも目が釘づけになりました。このことがきっかけで、小物を集めてみようと思い立ったのです。

アイヌの人々は日々の暮らしのなかで、木彫りや刺繍などの伝統的な工芸技術を脈々と伝えてきました。このはさみの柄にも、そんな伝統技術が応用されているといえます。

道鳥にも指定されているタンチョウヅルは、アイヌ語で「サロルンカムイ(湿原の神)」と呼ばれ、数多くいる神様のひとつとして大切にされているそうです。はさみの柄で向かい合うしなやかなツルたちの姿は、寒い季節に彼らが行う求愛行動を思わせます。土地の自然に向き合って生きてきた人ならではの観察眼が、小さな日用品に宿っています。


ちっちゃく「がおー」、木彫り熊のマグネット


わっ、熊だ! でもマグネットだから大丈夫 わっ、熊だ! でもマグネットだから大丈夫


こちらも木彫りの熊のマグネットです。木彫りの熊の現代バージョンといったところでしょうか。無邪気なしぐさと表情が、なんとも憎めませんね。

裏側の磁石部分 裏側の磁石部分


マグネットだから、冷蔵庫の扉でメモをおさえるのに使おうかとも思いましたが、それだけじゃなんだかもったいない……。ちょうど手頃なサイズなので、これからブローチに作り変えてみることにしました。


災難が逃げていく? アイヌ刺繍のヘアアクセサリー


あざやかな色づかいのヘアアクセサリー あざやかな色づかいのヘアアクセサリー


アイヌ工芸の刺繍は、伝統的な着物や各種装飾品に用いられてきたものです。木彫りは男性が行ったのに対し、刺繍は女性が施し、どちらも道具や家族を大切に思うからこその行為だといいます。


美しい文様をぱっきりとした色使いで、ヘアアクセサリーに縫いつけた一品。この文様は一般に、魔除けの意味合いをもつといわれています。

基本の文様の組み合わせで縫っていくのが決まりで、たとえばこのヘアアクセサリーには「アイウシシリキ(神の棘)」「ウレンモレウシリキ(渦巻き)」という形が見られます。

刺繍のおわりには、「キラウ(棘)」をつけて魔を除ける力をとどめるのが、アイヌ刺繍の特徴だそうです。さて、ここにはその棘はあるのかな……と、しげしげ見始めたら、つい時間が経ってしまいます。こんなにシンプルな文様なのに、奥深いものですね。


小ささがちょうどいい、アイヌ刺繍の針山


針仕事を見守るかのようなアイヌ刺繍の文様 針仕事を見守るかのようなアイヌ刺繍の文様


手のひらでころころと転がせるほど、かわいらしいサイズの針山にも、アイヌ刺繍を見つけました。さきほどの文様が、針山のてっぺんに縫いつけられています。

アイヌのおばあちゃんが作った針山と聞きました。日ごろのちょっとした繕い物だと、大きな針箱を持ち出すのが億劫なときがあります。このくらいの大きさなら、2〜3本の針をさして戸棚にしまっておけるので、普段使いにはちょうどよさそうです。


どんな音色? アイヌの口琴「ムックリ」


手のひら大のうすい木片から、どんな音色が? 手のひら大のうすい木片から、どんな音色が?


最後は、口琴「ムックリ」です。これは現代アレンジ小物ではなく、伝統的なアイヌの楽器。口琴というものを間近でみたことがなかったので、楽器だと知って驚きました。これのどこから、どんな音が出るんだろう?


全体の形は平らな棒です。細くなっている端を左手で持ち、反対をひもでひっぱるか指ではじくかして振動させます。振動している棒に自分の口を近づけて、口内をスピーカーのように使って音を大きくします。口の形で音の高さや質が変化します。


ムックリを演奏する人 ムックリを演奏する人
出典 http://www.ainu-museum.or.jp/nyumon/mukkuri/mukkuri.html


うまく演奏できると、「びよん、びよん」という音が出るということで、だいぶ練習したのですが、けっこう難しい! それらしい音はかすかにするのですが、自分の耳にかろうじて届く程度で、人に聴かせられる音量になるまではまだ時間がかかりそうです。アイヌの人々はムックリで、自然の情景や人の心を表現できたそうですよ。



北の大地で、長い時間をかけて培われてきたアイヌ文化。そのエッセンスを、日常のかたすみに置いてみるのはいかがですか。



参考資料
公益社団法人北海道アイヌ協会HP 
https://www.ainu-assn.or.jp/index.html
公益財団法人アイヌ文化振興・研究推進機構パンフレット
「イランカラプテ」キャンペーン推進協議会パンフレット
アイヌ民族博物館HP
http://www.ainu-museum.or.jp/nyumon/mukkuri/mukkuri.html

この記事を書いた人

てらしまちはる Chiharu Terashima |ライター

児童書編集を経て、フリーライター。専門分野である絵本、こどもアプリの話題を中心に、ウェブ媒体や雑誌で執筆中。2016年より始めたイタリア・ボローニャブックフェア独自取材を今年『ボローニャてくてく通信』として発表する。

ボローニャてくてく通信
・Facebook:https://www.facebook.com/bolognatektek/
(2018/3/1公開)
・公式HP:http://terashimachiharu.com/

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